2025テーマ Humaning
-人間すること-

人類学者ティム・インゴルドのこの言葉は、いま、私たちの社会への問いと言えるでしょう。効率や即時的な成果が重んじられ、利益は「いまこの瞬間」に最大化されることが優先される社会は、いったいどこへ向かうのか。土地すらもエネルギー源や資源として数値化され、自然や環境とのつながりはますます希薄になっています。不動産の価値も、「立地」「利回り」「需給バランス」といった尺度に還元され、「坪単価」という記号に置き換えられる。こうした合理的なシステムが広がるなかで、私たちの生き方や営みも、いつしかその「システム」のためのものになってはいないでしょうか。 

けれど、人間とは本来、環境や他者との応答的で動的な関わりの中で育まれ、営まれてきた存在です。 日本でも、里山や神社の鎮守の森、猟師が自然と対話するように営む生業など、環境とつながる文化がたしかに根づいていました。そうした根源的に大切なものは、気づかぬうちに失われ、その喪失感は、現代に静かな違和感として響いています。 都市や地域に真の価値をもたらすのは、数字や効率だけではありません。どれだけ多様な線が交差し、重なり合い、そこで新たな線を引く人々が集い、未来を描けるか。都市や地域を生かす力は、そんな人間の関係性の中にこそあると、私たちは信じています。 

アーティストは、今もなお、社会や土地と応答し、自らも変化しつづける、まさにHumaningな存在です。
本展が、新たな線を引こうとする者たちの飛翔の場となり、次代へとつながる一歩となることを願い、第8回公募展を開催いたします。 

審査員プロフィール

  • 麻生恵子 

    富山県美術館 主幹・普及課長 / 学芸員

    麻生恵子 
    富山県生まれ。1992年から富山県の美術館の学芸員として、国内外の近現代美術を中心とした展覧会、および教育普及活動の企画に携わる。2018年より富山県美術館の普及課長、2024年より現職。主な展覧会は、「とやま 版」(2000年、富山県民会館美術館ほか)、「瀧口修造 夢の漂流物」(2001年、富山県民会館美術館)、「I BELIEVE 日本の現代美術」(2009年、富山県立近代美術館)、「実験工房 戦後美術を切り拓く」(2013年、富山県立近代美術館)、「三沢厚彦 ANIMALS IN TOYAMA」(2018年、富山県美術館)、「大竹伸朗展(2023年、富山県美術館)など。
  • 伊東順二

    美術評論家 / プロジェクトプランナー

    伊東順二
    アート、音楽、建築、都市計画など分野を超えたプロデュースを多数手がける。1995年「ベニス・ビエンナーレ」日本館コミッショナー。1997年パリ日本文化会館柿落とし企画「デザインの世紀」展コミッショナー。2000〜01年「文化庁メディア芸術祭」審議委員兼企画展プロデューサー 。2002年ニューヨーク「The New Way of Tea」展キュレーター。2014年ピッティ宮殿近代美術館「Tourbillon」展等キュレーター。2004年〜07年長崎県美術館館長。2005年~13年富山大学教授。2012年〜2023年3月東京藝術大学特任教授。富山市ガラス美術館名誉館長。
    https://junjiito.com/
    Photo ©︎Lorenzo Barassi x 伊ぃTOMO
  • 筧 康明

    インタラクティブ・メディア研究者 / アーティスト / 東京大学大学院情報学環教授

    筧 康明
    慶應義塾大学、MITなどでの活動を経て、2018年より東京大学大学院情報学環にて研究・制作・教育に従事。博士(学際情報学)。物理素材や現象とデジタル技術を掛け合わせ、モノや身体、空間を介した体験や周囲との関係を拡張するインタラクティブ・メディアを開発する。エンジニアリング/ サイエンス / アート / デザインなど分野を越えて活動を展開し、SIGGRAPH、Ars Electronica Festival、YCAM、ICC、HOSOO Gallery、LVMH Métiers d'Art La Mainなどでの展示や、STARTS PRIZE 2022 Honorable Mention、第23回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞、ACM CHI2017 Best Paper Award、平成26年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞などを受賞。
    https://xlab.iii.u-tokyo.ac.jp/
  • ジャコモ ザガネッリ 

    作家 / キュレーター / 活動家

    ジャコモ ザガネッリ 
    アーティスト、キュレーター、そして市民参加型プロジェクトの企画者として、幅広く活動している。人々を巻き込んだプロジェクトを数多く手がけており、「公共」や「社会」という概念を「空間」というテーマを通じて問い直し、挑戦している。この20年間で彼は、ヨーロッパやアジアを舞台に、さまざまな団体、財団、文化施設、公園、地域コミュニティ、行政機関などと協力しながら、多くのプロジェクトを立ち上げ、推進してきた。
    主なプロジェクトには、コレクティブ :esibisco.(イタリア、2005–2015)、フィレンツェにおける巨大インスタレーションNon A Tutti Piace L’Erba(イタリア、2008)、空き物件の調査と再活用戦略に関する研究 La mappa dell’abbandono(イタリア、2010年より継続中)、台北当代芸術館(MOCA Taipei)での個展Superficially(台湾、2017)、 Grand Tourismo(ウフィツィ美術館、フィレンツェ、イタリア、2018–2019)などがある。また、瀬戸内国際芸術祭(日本、2019)、 タイランド・ビエンナーレ(2021–2022)、森の芸術祭 晴れの国・岡山(日本、2024)にも参加。

    2022年から、灰谷歩、シルヴィア・ピアンティーニと共に、東京・墨田区で卓球台を設置することで公共空間の新しい使い方を提案することを目的とした、長期プロジェクト《Ping Pong Platz》をスタート。
    https://www.giacomozaganelli.com/
  • 丹原 健翔

    作家 / キュレーター

    丹原 健翔
    1992年東京生まれ。作家、キュレーター、アマトリウム株式会社代表。ハーバード大学美術史学科卒業。展覧会の企画・批評・制作・制度設計にわたり多角的に活動し、芸術の表現と言語、社会との回路を再設計する実践を行っている。現代美術、工芸、建築、企業文化事業、教育プログラムなど、分野横断的な企画を通じて、文化の制度と個人表現の間にある摩擦や翻訳不可能性をひとつの創造の契機として、新しい語りと経験の形式を提案する。主な企画に『凸版印刷 GEMINI Laboratory Exhibition:デバッグの情景』(2022、ANB Tokyo)、『無人のアーク』(2023、大阪関西国際芸術祭)、『Back to Thread 糸への回帰』(2023、FUJI TEXTILE WEEK)、『循環する宮殿』(2024、Mikke Gallery)、『竹中工務店 たてものめがね まちめがね展 宇宙から虫まで、縮尺で考える建築の見方』(2025、VS.) など。その他に、東京工芸大学非常勤講師、アートスペース「ソノアイダ」レジデントキュレーターなど。

    Photo ©︎野本ビキトル(METACRAFT) 提供:e-vela.jp

  • 全員

    賞金20万円・受賞者グループ展

    賞金20万円・受賞者グループ展
    受賞者4名のグループ展を開催。期間中、各賞の贈呈式を行います。
    会場:コートヤードHIROO、展示期間:2025年11月7日(金)~22日(日)
    ※展示に係る運搬費用等の補助あり
  • 2名

    コートヤードHIROO賞

    コートヤードHIROO賞
    副賞として、2026年 コートヤードHIROOでのアートプログラムの実施。アーティスト・イン・レジデンス、グループ展など相談の上決定いたします。
    ※制作費等の補助あり
  • 2名

    LOCAL AWAKEN賞

    LOCAL AWAKEN賞
    副賞として2026年 地方都市でのアートプログラムの実施。実施場所や内容(アーティスト・イン・レジデンス、グループ展など)は相談の上決定いたします。
    ※制作費等の補助あり

募集要項

募集内容 データ送付およびコートヤードHIROO内で実物の展示が可能なものであればジャンル問わず可( 平面・立体・映像・インスタレーションなど形式は不問 )
※一人もしくは1グループにつき1点まで
※未発表作品に限る ( 他所で授賞していない。商業出版されていない。新聞・雑誌に掲載されていない。)
コートヤードHIROOの詳細はこちら
スケジュール
6/23(月)~8/24(日)
公募期間
8/24(日)
23:59 応募締切
9/19(金)
一次選考結果発表 メールでのご案内を予定しております
9/25(木) PM
最終選考・プレゼンテーション 会場 コートヤードHIROO ※会場参加推奨。オンライン参加可
9/30(火)
結果発表
11/7(金)~22(日)
受賞者グループ展示 会場 コートヤードHIROO
会期中、各賞の発表および贈呈式を行います
公募条件 以下の条件をすべて満たす方
(1)現代美術の分野で活動するアーティスト(ジャンル不問)
(2) 学生であること(短大、専門大などは不問※国際学生証が発行できる教育機関に所属していること)
(3) 最終選考に進んだ場合9月25日に最終審査会・プレゼンテーション、及び11月7日(金)~22日(日)に展示が可能な方( プレゼンテーションに限り来場が難しい場合はオンラインを検討 ) (4) 日本語でのプレゼンテーションができる方(※日本居住者、国外居住者を問いません)
[個人情報・著作権の扱い]
応募作品の著作権は応募者に帰属。ただし、応募者は印刷物、ホームページ掲載、メディアへのリリース等、A-TOM ART AWARDの広報活動のため主催者に著作権を無償で許諾するものとする。
参加方法 特設サイトよりフォーム記入にて応募
※Googleフォームを使用するため、Googleアカウントを持っていない方はメールにて受付
下記事項記載必須のうえ、
a-tomartaward@cy-hiroo.jp 】まで
・氏名( カナ ) ・アーティスト名 
・所属学校( 専攻・学年 )
・メールアドレス ・電話番号 
・本アワードをどこで知りましたか
・応募作品の形式( 2D、3D、4D、インスタレーション、その他 )
・応募作品タイトル ・ポートフォリオPDF(任意) 
・添付物( 静止画の場合は jpgまたはpngでの形式、動画の場合はmp4形式 [ 可能であればコーデックをH.264に指定 ] でそれぞれご提出下さい。静止画・動画とも400MB以内でご提出ください。ファイル便による送付の場合はダウンロード期限を最長に設定してください。)